『花子とアン』あらすじ第126回

ふじと吉平は娘・ももの事を花子と英治に丁寧に頼んで甲府へ帰って行った。
花子は、改めてももに一緒に暮らすことを提案した。
「うちで一緒に暮らそう!お嫁に行く時、もも言ってくれたじゃない。あの時、ももがああ言ってくれなかったら、お姉やん、お話を作る夢諦めてたかもしれない。私が今翻訳したり童話の仕事をしていられるのは、もものおかげだよ」
花子の言葉にももは何も答えなかった。
>もものかじかんだ心が解ける日は来るのでしょうか。

― ある日、ラジオ局に収録に来ていた花子が漆原、黒沢、有馬と廊下で出会った。
「皆さん。ごきげんよう。今日もよろしくお願い致します」
花子が丁寧に挨拶をすると黒沢が褒めた。
「村岡先生の放送、大変な反響です」
「まあ、それはうれしいです。では後ほど。ごきげんよう(笑)」
笑顔ですれ違うと漆原が小さい声で呟く。
「“ごきげんよう”か…」

― 花子は原稿の添削を終えると黒沢が花子宛のファンレターを渡してくる。
「これ全部、村岡先生宛てのお手紙です。どうぞ、ご覧になって下さい」
「ありがとうございます」
手紙をみていくと、一通のハガキに目が留まる。
>それは、病気の坊やを持つ、お母さんからのお手紙でした。
『村岡花子先生。“コドモの新聞”、息子が大層楽しみにしております。息子は入院していて、ふさぎ込む日もあるのですが、村岡先生の放送を本当に心待ちにしております。息子にとって、先生の放送は、希望なのだと思います』

― その頃、ももは姉・かよの店を手伝っていた。
「もも。少し休んだら?」
「私、一生懸命働くからここに置いて」
「でもお姉やんが寂しがるよ?ももと一緒に暮らしたいって、お姉やん心から思ってるよ」
「お姉やんはきっとそんな事思わないよ。あんなに忙しそうだし」
「お姉やんがあんなに仕事をするようになったのは、坊やが亡くなってからだよ。それからは、日本中の子どもたちに物語を届けるんだって、いつもたくさん仕事を抱えてる。ラジオのおばさんも、そんな気持ちで引き受けたんだと思う」

― ももは、自分の荷物をとりに村岡家を訪れる。
英治は、ももにきがつくと笑顔をみせた。
「ももさん…来てくれたんですね。花子はラジオ局に行ってますけど帰ってきたら大喜びします(笑)」
「違うんです。荷物を取りに…」
「えっ?…あ、ああ」

― 英治は歩の写真を見ているももに荷物を渡した。
「はい、これですね」
「すみません…」
「実を言うと…僕はももさんが羨ましいです。ケンカができる兄妹がいて羨ましいです。僕は弟を亡くしました。ケンカも仲直りも一人じゃできません。あっ!そうだ。ももさん、ちょっと待ってて。花子が書いた、新しい本、持ってって下さい(笑)」
英治は花子の部屋に行き、一冊の本を手に取った。
その時、ラジオ収録の時に持たせていた歩の写真入りのお守りが机の上にあることに気がつき、英治は慌てて、ももに写真を見せた。
「ももさん。お願いがあるんです!この写真をラジオ局まで届けてもらえませんか?僕が行ければいいんですが急ぎの納品があって…花子に渡してほしいんです。どうかお願いします」
「分かりました」
「助かった(笑)…あっ!じゃあ、今、地図を描きますから!」

― ラジオ局に歩の写真を届けにきたももは、黒沢に案内され指揮室へ。
部屋の中では花子と漆原、有馬の会話が聞こえてくる。
「あの、ご相談があるんですが…」
「今度は何ですか?」
「原稿を変更したいんです」
「またですか…?」
漆原が花子の言葉に呆れると有馬もため息まじりに花子を説得する。
「放送はもう間もなくです。逓信省の承認を取る時間はもうありませんから、そのままお読みになるしかありません」
「…変更といっても一言だけです。最後の挨拶を“さようなら”ではなく“ごきげんよう、さようなら”にしたいんです」
「冒頭にも“ごきげんよう”と述べて、最後にまた“ごきげんよう”と述べるのですか?」
有馬の眉間にシワがよる。
一方、漆原は思わず苦笑してしまう。
「よほど“ごきげんよう”という挨拶をしたいのでしょう(笑)」

そして、漆原は花子の経歴について指摘を始める。
「あなたは、修和女学校のご出身だそうですね?」
「はい…」
「うちの家内も修和の出身で“ごきげんよう”は朝から晩まで耳にタコが出来るくらい聞かされます。あそこは家柄のいいお嬢様たちが通う名門です。しかし…あなたは、給費生だったそうですね?…貧しい家の出であるあなたが殊更に“ごきげんよう”という言葉を使いたい気持ちは分かります。しかし“ごきげんよう”が似合う人間と似合わない人間がいるんですよ」
漆原の言葉に花子は真っ向からうけてたつ。
「そうでしょうか?“ごきげんよう”は様々な祈りが込められた言葉だと思います」
「祈り?」
「“どうかお健やかに、お幸せにお暮し下さい”という祈りです。人生は、うまくいく時ばかりではありません。病気になる事もあるし、何をやってもうまくいかない時もあります。健康な子も、病気の子も、大人達も、どうか全ての人たちが明日も元気に、無事に、放送を聞けますようにという祈りを込めて、番組を終わらせたいんです。どうか、お願いします」

その時、黒沢が有馬と漆原に進言する。
「挨拶の部分ですから、変えても問題にはならないと思います。」
「いいえ。一行一句変えてはなりません」
有馬は反対するが、漆原は花子の提案をのむ。
「まあ、いいでしょう。問題になったら降りてもらえばいい。時間だ。始めよう」

― 収録部屋に行こうとする花子は黒沢に声をかけられ、ももに気がついた。
「もも!?」
「お姉やん、これ、お義兄さんから…」
「あ…ありがとう!」
「じゃあ、私は…」
「もも。本当にありがとう」

「“コドモの新聞”の時間です。村岡花子先生です」
有馬に紹介され、花子はマイクに向かって語りかけた。
「全国のお小さい方々、ごきげんよう。これから皆様方の新聞のお時間です。最初のお話です。「大阪で、ヒヒが逃げたお話です。今朝の6時ころの事です。大阪市のある幼稚園で、飼っていた大きなヒヒ…これはお猿の一種ですが、普通のお猿よりも犬のように口がとがっています。そのヒヒが、どうしたのか、急に鉄の首輪をちぎって…」

花子はラジオの最後を漆原に提案したとおりに話した。
「今日の新聞のお時間はここまでです。それでは皆さん。ごきげんよう。さようなら」
ラジオ局で花子のラジオを聴いていたももは、小さく呟いた。
「ごきげんよう…」
>花子の声が、魔法の言葉のように、ももの心にしみ込んでいきました。
>ごきげんよう。さようなら。

スポンサーリンク

コメントを残す

サブコンテンツ

最近のコメント

このページの先頭へ